ニュースの概要
イ・スマンがプロデュースするA2Oエンターテインメントが、韓国で男性グループ「A2O SOUL」と女性グループ「A2O LITE」を同時に立ち上げる新人デビュープロジェクトを始動した。両グループは10月12日にステージを初めて披露する予定とされ、新しいアイドルIP(=知的財産としてのキャラクターや作品群)の展開として注目を集めている。男女のグループを並行して投入することで、性質の異なるファン層を取り込み、音楽や映像、イベント、ファンとの交流の場までを一体で育てる狙いがうかがえる。
引用元: イ・スマン、新グループA2O SOULとA2O LITEを韓国で同時展開(Kstyle)
分析・見解
男女を同じ日に出す、異例とも言える賭けの意味
K-POPの新人デビューは、普通は1組ずつ時期をずらして行う。会社の宣伝費も、スタッフの手も、練習生の育成枠も限られているからだ。それを男女2組で同時に出すということは、最初から「会社の看板を2本持つ」と宣言したに等しい。
同時デビューの利点は、話題づくりを一度にまとめられることだ。映像制作や広告、ファンイベントの準備を共通化でき、1組あたりの固定費を下げやすい。一方で、どちらかが埋もれる危険も抱える。初動の注目を2組で分け合うため、片方でも歌や見せ方で特色を出せなければ、比較され、差を付けられてしまう。
創業者の経験が生きる場面と、試される場面
イ・スマン氏は、SMエンターテインメントを築き、練習生の育成から楽曲の制作、海外展開までを一貫して行う仕組みを広めた人物として知られる。今回の2組も、その経験の延長にある取り組みと見るのが自然だ。デビュー前から世界観を設計し、ファンを段階的に育てる手法は、同氏が長年磨いてきた得意分野である。
ただし、今は環境が違う。ファンは動画投稿サイトやSNSで、練習生の段階から候補者を見比べる。既存の大手が持つ流通網や放送との関係を、そのまま使えるとは限らない。看板となる名前の力と、実際の人材の魅力が噛み合うかが問われる。
男性と女性、売り方の違いが収益の形を変える
一般に、男性グループは熱心なファンによるアルバム購入やコンサートへの支出が厚く、女性グループは一般層への広がりや広告出演、ブランドとの提携に強いと言われる。もちろん例外は多いが、収益の山が出る時期や場所が違うことは確かだ。2組を並べれば、片方の収益が伸びる間にもう片方を育てる「時間差の分散」ができる。
たとえば、先に音源や広告で認知を稼ぎ、後からイベントやグッズで深く稼ぐといった組み合わせも考えられる。これは1組だけの会社には取りにくい設計だ。
新人が乱立する韓国で、名前の信用が持つ価値
韓国では新人グループの数が年々増え、デビューしても数か月で話題が消える例が珍しくない。こうした中で、著名な制作者の名前は、広告費の代わりに働く信用になる。初日からファンや業界関係者が耳を傾けるからだ。ただし信用は貸し出し枠のようなもので、作品の出来が伴わなければ急速に減っていく。
もう一つ見落とせないのは、同時展開が「比較」を生む点だ。男女どちらが先に支持を集めるかは、そのままA2Oという会社の育成方針への評価にもなる。成果が割れた場合、会社がどちらに資源を寄せるのかという判断も早く迫られる。
ビジネスへの影響
提携や広告を考える企業が、今のうちに確かめること
新しいグループは、人気が定まる前が最も条件を交渉しやすい。広告主や商品開発の担当者は、デビュー直後の数字だけで判断せず、三つの点を見ておきたい。一つ目は、公式の動画や投稿が継続して更新されているか。二つ目は、ファンの反応が国内だけに偏っていないか。三つ目は、契約先の運営会社が権利の範囲を明確にしているかだ。
特に肖像(=顔や姿の使用権)の扱いは、後の揉めごとになりやすい。使える期間、地域、媒体を文書で決めておくことが基本となる。
小さく試し、伸びたほうへ寄せる進め方
男女2組が並ぶ状況は、企業にとって「試験の場」にもなる。たとえば、限定商品や短期の販促を両方に少額ずつ用意し、反応の差を見てから本契約に進む方法がある。この方法なら、どちらかが伸び悩んでも損失を抑えられる。
関連グッズや音楽配信、ライブ関連の事業者は、在庫を抱えすぎない仕組みが重要だ。受注を見てから生産する方式や、返品条件の事前取り決めが効く。また、日本のファン向けに言語対応や決済手段を整えられるかも、売上を大きく左右する。
投資家・事業者が持っておくべき判断の物差し
投資の観点では、話題の大きさよりも、継続して収益を生む仕組みがあるかを見る。ファン向けの会員制サービス、公演、物販のように、毎月・毎年繰り返し売上が立つ収入源を何本持てるかが鍵になる。A2Oの展開は、その本数を増やす試みと言える。ただし現時点では、収益の実績は未知数である。数か月単位で成果を点検し、基準に届かなければ撤退する線をあらかじめ決めておくのが現実的だ。社内で「誰が最終判断をするか」を決めておくことも欠かせない。