b.stageの国境なきファンクラブ開設が示す、推し活の新しい形

ニュースの概要

ファンダム事業を手がけるBe My Friendsが運営するプラットフォーム「b.stage」で、新たに2組の公式ファンコミュニティが開設された。ひとつはAmuse Entertainment所属のLIPSTICKERZ、もうひとつは韓国と日本の両方で活動するシン・ウォンホである。注目すべきは、海外に住むファンも居住国による制限を受けず、公式ファンクラブに入会できる点だ。会員は限定コンテンツやデジタル特典を受け取れ、アーティストと双方向でやり取りもできる。これまで国ごとに分かれがちだった公式ファンクラブの壁を取り払い、国境をまたぐファン体験を一つの場所に集める狙いがうかがえる。b.stageはこの2組を加え、ファンダム事業の基盤をさらに広げた。

引用元: b.stageが国境を越えた公式ファンクラブを開設、ファンダム事業基盤を拡大(Sports Kyunghyang)

分析・見解

居住国で入会を断らないという小さくない転換

これまで公式ファンクラブは、国内の事務所や運営会社が国ごとに窓口を持つのが普通だった。決済の方法、会員証の発送先、本人確認の手順がすべて国内向けに作られていたためだ。その結果、海外のファンは非公式の代行業者や転売に頼らざるを得ず、正規の収益がアーティスト側に届かない場面も多かった。

居住国の制限をなくすという今回の方針は、この「見えない取りこぼし」を拾い直す試みと言える。

日韓にまたがる活動がプラットフォームを必要とする理由

今回の2組は性格が違う。LIPSTICKERZは日本の大手事務所に所属するグループで、シン・ウォンホは韓国と日本の両方で活動する。後者のように二つの国で動くアーティストは、ファンクラブを国ごとに二つ作ると、会員情報も配信内容も二重管理になる。

共通の基盤に一本化すれば、運営側は管理の手間を減らせる。ファンにとっても、同じ場所で日本語と韓国語の投稿、グッズ、ライブ情報を追える。分断されていた体験が一つにまとまる点が、地味だが大きい。

先行するWeverseとの違いと、競争の構図

ファンダム基盤の先行例としては、HYBEのWeverseがよく知られる。ただし大手事務所の自社基盤は、その事務所のアーティストが中心になる。一方、b.stageのような独立系の基盤は、事務所の規模を問わず複数のアーティストを受け入れられる。

中堅の事務所は自前で基盤を作る資金も人材も足りないことが多い。そこに「借りて使える」選択肢があることは、業界の層を厚くする。大手の囲い込みと、独立系の相乗りという二つの流れが並走する形だ。

見落とされがちな課題は決済と言語と時差

国境を外せば、次の壁が現れる。通貨ごとの決済手数料、各国の個人情報保護の規則、そして言語である。特に会員限定のライブ配信は、時差の違うファンが同時に集まりにくい。

そこで鍵になるのは、リアルタイムの熱量に頼りすぎない設計だ。録画の視聴権、自動翻訳つきの投稿、時間帯をずらした交流の場など、非同期でも価値が落ちない仕組みが、海外会員の継続率を左右するだろう。

ビジネスへの影響

海外会員を数える前に、売上の取り方を見直す

国境を越えた入会は、会員数の増加だけでなく、収益の構造を変える。これまで海外ファンの支出は、物販の転売や非公式サービスに流れていた。公式の入会窓口ができれば、その一部が会費やデジタル特典の売上として戻ってくる。

事務所や運営会社は、まず自社の海外ファンがどこに何人いるかを、SNSの反応や配信の視聴地域から把握するとよい。数字の裏付けなしに多言語対応へ投資すると、費用だけがふくらむ。

小さく試すなら、デジタル特典と翻訳から

実務でまず着手しやすいのは、物の発送を伴わないデジタル特典である。送料や通関の手間がなく、通貨の違いも吸収しやすい。投稿の翻訳も、全文を人手で訳す必要はない。重要なお知らせだけを人が確認し、日常の投稿は機械翻訳で補う運用でも、会員の満足度は十分に保てる。

自社基盤か外部基盤かの判断軸

自前でファンクラブ基盤を作るか、外部の基盤を使うかは、会員の規模と専任担当者の有無で決まる。目安として、専任の運営人員を置けない段階では外部基盤が合理的だ。逆に、会員データを自社の資産として深く分析したい場合は、データの持ち出し条件を契約で必ず確認したい。囲い込みよりも、将来の乗り換えやすさを残すことが、長い目で見た交渉力になる。

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